とあるライダーの話

世界でも有数の治安が悪い街としても有名なコロンビアのカリ。この街にはヘロニモと言う数年前までコロンビアでトップクラスのスキルを持っていたライダーが住んでいる。数年前まではコンスタントにインターネット上にライディング動画を上げていて、バリアルを駆使した高難度のリアトリックで成長速度も早く僕が注目していたライダーの一人だった。しかしここ数年彼の動画がアップされる事も無く、インターネット上のフラットランドシーンから完全に消え去っていた。

 

去年僕らはカリの街を訪れた。その噂を聞きつけたヘロニモが僕らに連絡をくれ僕らは彼の家に立ち寄る事にした。ヘロニモはとても明るくポジティブなエネルギーに満ちあふれた男だった。彼のポジティブな振る舞いはハードな旅に疲れた僕らに笑顔と活力を与えてくれた。ライダーとしての彼は5年前腰にヘルニアを患いライディングが出来ない状態にあった。医者には彼にBMXを諦めるようにと言った。フラットランドを愛する彼は目の前にBMXが有っては乗ってしまう可能性が有ると言う事で5年前に愛車を手放した。これが彼の動画がアップされなくなった理由だった。それでもこの5年間彼はフラットランドを愛し続け、常に世界のフラットランド情報を集めシーンの動向を追い続けていた。2000年代以降のフラットランドの知識、技の知識の豊富さには驚かされた。もしも自分がBMXに乗れない状態になったら僕も彼のようにポジティブに振る舞いフラットランドの情報を追い続ける事が出来るだろうか?

僕らに見せたい物が有ると言って彼の部屋から彼の宝物だと言う2つの物を持って来てくれた。1つは2008年にコロンビアで行われたマジックフラットと言う大会に来ていたマティアスダンドワから直接もらったと言うステレオパンダのバンダナそしてもう一つはKHEのゲイシャハブが装着された後輪だった。この5年間様々な医療機関を訪れ再びBMXに乗る事を諦めていなかった。自転車は手放したが復活を信じて後輪だけは手元に残していたのだ。フラットランドはのめり込めばのめり込むほど身体や精神を酷使する場合が多いに有る。色々な理由でBMXから離れる人が居るがモチベーションが有るのに怪我が理由でBMXを離れるライダーを見ると切なくなる。

 

しかし昨日1つの映像がヘロニモから送られて来た。なんと彼のライディング映像だった。5年以上振りに乗ったと言って高難度のバリアル技を決めていた。こんなにも長い間乗っていなかったのに。お前は天才か?そして再びBMXに乗っている彼の姿は本当に嬉しそうだった。まだまだ復活への第一歩。5年間BMXには乗って居なかったが心は常に離れていなかった。だからこの期間は彼にとってブランクではない。

成長した精神で身体を気遣いながらコンスタントに乗り続けて欲しいそしてこの期間に貯めたアイディアを具現化して僕らをビックリさせる様なオリジナルなトリックを見せて欲しい。

僕らがカリを離れる前に彼は僕に言った。僕らが次に再会を果たす時その時はお互いBMXと共にそして一緒にセッションをしよう!と。